あの日、喫茶店で胸を射抜かれた音
原点の一曲
1980年代の初頭、東京の郊外にある小さなクラシック喫茶で流れて来たのは、
オランダのリコーダー奏者 F.ブリュッヘン録音による A.コレッリ作曲《ラ・フォリア》でした。
古びたスピーカーから、アナログレコード特有の雑音を伴ったその音楽は、
珈琲とタバコの匂いが混ざる空気の中、レーザー光線のように真っ直ぐこちらに向かって来ました。
笛とともに歩んだ日々
以来、僕は狂ったようにこの笛の練習を始め、東京からベルギー、そして鹿児島と拠点を移しながら、
その間、演奏者として様々な国を旅するようになりました。
そんな頃、老いたブリュッヘンは世を去りました。
このコンサートに寄せて
この度、敬愛する鍵盤奏者 村原仁美さんをお迎えし、独演会を開催する運びとなりました。
リコーダー奏者としての僕の背骨を作ってくれたブリュッヘン、未熟な僕を導いてくださった先生方、
そして鹿児島の音楽ファンの皆様に、このささやかなコンサートを捧げます。